side C のぞみがすっごく綺麗になった。 綺麗になるだろうな、とは思っていたけどまるで蝶が羽化したかのように、薔薇がつぼみを開いたかのように綺麗になった。きっともっと綺麗になる。それを思うとおいていかれるような気分になってちょっと心がざわざわするのを感じる。 髪がセミロングぐらいにまで伸びて、結んでいた髪を下ろした。 それだけでぐっと感じが変わったのに、最近は日曜限定でカラーリップをしている。 別にそれだけでメイクしてるわけじゃないけど正直それもやめてほしい。 でもそれは僕のエゴだとわかっているから言わない。 本当は誰にものぞみを見せたくない、僕のそばにだけおいておきたいけど実際にそんなことができるわけでもなく、のぞみはまだ高校1年生だ。 心配していたことが見事に的中した。 シロップとりんに言われた言葉が気になって気になって気になって・・・ 今日の待ち合わせには30分も早くついてしまった。 正直気が気でない。待っていてもイライラするだけだから思い切ってのぞみの家の近くまでいくことにした。(動物的勘?) 遠目にのぞみと知らない男の子が見えた。 その様子をみただけで、血の気が失せるのを感じた。 のぞみが昔僕が生徒から手紙を受け取ったのを見たときこんな感じだったんだろうか? とか一瞬考えたけど、今と昔じゃ状況が全然ちがうし! のぞみの角度からだと僕は見えていない。僕は壁際によって声が聞こえるぎりぎりのあたりまで進んだ。電信柱の後ろに隠れる。(隠れる必要はないんだけど!) 「手紙出してたの、俺なんだけど・・・」 は? 出してた?出したじゃなくて出してた? というか手紙!? 話し声が続いている。 「返事出したんだけど・・・私、好きな人がいるんだ、だから・・・ごめんなさい!」 ちょっとだけホッとした。ああ、よかった。 だけど次の瞬間、のぞみの手首をとった!ばか!やめろ!なにしてるんだ! もう、胃が痛くて仕方がない。 「そいつと付き合ってるの?俺に可能性・・・全くない?」 (・・・・・・・・・・・無理!) 「のぞみ!!」 たまらず声をかけた。のぞみはすごい顔をして振り向いた。 (ありえない!とか思っている!あれは絶対思ってる!) のぞみの手首をとって強引に自分の元に引き寄せた。 「僕の彼女に何か用?」 「・・・・・・!いえ」 子供相手に大人気ないのは百も承知だったけど、自分に全く余裕がなかった。 そのまま相手の子は走っていってしまった。 のぞみが恐る恐る上目遣いで僕を見上げた。 「迎えに来てくれたんだ・・・ありがとう・・・」 「・・・・どういたしまして」 とりあえずのぞみの手首を掴んだまま待ち合わせの予定だった公園まで急いだ。 途中でのぞみが呼んでいた気がしたけど聞き流した。 公園についてとりあえずベンチに座らせた。ちょっと乱暴だったかもしれない。 わかってはいるけどどうにも自制がきかなかった。 隣に座って息を整えた。 「僕に言いたいことは?」 「わわわわわたし悪いことしてないよ?全部お断りしてるし!」 もう、なんていうか挙動不振。 「シロップとりんから中途半端な情報もらって僕がどれだけ心配したかわかってる?」 「ええ!?ココには絶対にいわないでって言ったのに!!」 「ぜったいにいわないで?」 わざとゆっくり言う。 のぞみがはっ!として、両手で口を覆う。 「のぞみ・・・・」 僕はお説教モードに入ろうとした。 「だって・・・心配かけたくなかったんだもん・・・ココは今王国の復興でとても忙しいときだし、私のことで心配してほしくなかったんだもん」 のぞみのほうが一枚上手だった。 そんな顔されたらもう何もいえなくなる。 「それにココだって先生だったとき、手紙もらってたけど私なんにも聞いてなかったし」 やっぱりそのこと根にもってたようだ。 「それはちがう、あの時僕は教師でのぞみは生徒で、仲間ではあったけど、付き合っていたわけじゃなかったし、手紙をもらったことなんて恥ずかしくていいにくかったし」 「おんなじだよぉ!『今日は告白されちゃったよ』なんていえないもん」 「同じじゃないよ。もう今回こういうことがあるって知っちゃったから、言ってくれないと余計に心配になる。だから言って」 「ええええええー言えるようにがんばるけどぉ」 なんだか平行線をたどりそう。 「僕がこっちの世界にくるのは週末ぐらいだし、結婚していたとしても24時間一緒にいられるわけじゃないから僕がしてあげられることは少ないかもしれない。でも、できるだけ秘密は作りたくないし作ってほしくないんだ。少しは僕の気持ちわかってもらえるかな?」 と、いったところでのぞみが真っ赤になって下を向いてしまった。 自分の言ったことを反芻してはっとした。 「あ、えーと、その、結婚というのは仮定の話で・・・うーんと、考えてないわけじゃないから・・・」 のぞみが顔を真っ赤にして見上げてる。 「とにかく!秘密は作らない!夢原、返事は?」 ずる〜〜〜い、というのぞみの反論は無視した。 きっとこの先ずっと僕はやきもきすることになるんだろうな、と今回の件で覚悟することになる。 Fin(06/june/2009) |