交錯


「クレープ王女は今頃もうついたかな」
夕方にクレープ王女が自国へ帰っていった。
くるみは下で夕飯の支度をしていて、今はココとナッツだけが部屋にいた。
「ん?ああ、シロップだからすぐだろう」

「ナッツ・・・」
「ん?」
「クレープになにか言った?」
ココは柔らかい笑みを浮かべてナッツに聞いた。
「たいしたことは言っていない。ただ・・・ちょっと背中を押しただけだ。相当思いつめていたからな」
「そっか・・・」
「帰る頃にはすっきりした顔していた。だからちゃんとおまえに言ったんだろ?」
「ああ、泣かせてしまった」
「その割りにココもすっきりした顔をしているな」
「うーん、なんだろう。自分の気持ちを誰かにはっきりと言ったのは初めてで、妙にすっきりした気がする」
「そうか・・・」
「夢を、一緒に夢をかなえたい女性がいるって言った」
「・・・・そうか」

言ってからココはふと気がついた。
「あれ・・・?なんでクレープはのぞみってわかったんだろう・・・?」
「むしろわからないほうがおかしいだろ」
ナッツは呆れて言った。
「えええええ、そんなにあからさま、かなぁ・・・・?」
心外だ!というココの言葉をナッツはスルーした。

「手放すことができなくなるぞ」
「・・・・・・・・」
「言葉にすればこそ、できなくなることもある」
「すっきりしたっていうのは・・・つまりそういうことさ」
やはりすっきりした顔つきでココは答えた。
「・・・そういうことか」
「ああ」

ナッツはなんとなく理解した。そしてそれ以上ココを問い詰めることもしなかった。


fin(08/june/2009)
inserted by FC2 system