side  S


一通の手紙がすべての始まりだった。

俺はそれまでエターナルで働いていたけどそれらしい情報は全然回ってこなかった。
下っ端として働く代わりに情報は回す、そういう約束だったにも拘らず、だ。
それが本当にわからなかったのか、それとも意図的に止めていたのか。
それはわからない。
ただ結局のところ働かせられていた、ということだけだ。

一通の手紙が運命を変えたといってもいい。
ようやく掴んだチャンスを手放すほど俺は愚かじゃない。
フローラがのぞみに託したものの大きさを考えれば、俺がエターナルにいる理由がもうない。
むしろのぞみを守ってキュアローズガーデンを探したほうが得策だ。

だけど、こののぞみがやっかいで、とにかく突っ込みたがりの上に危なっかしい。
言っていることはとても正論なんだけどもうちょっと状況とか考えられないのか?
最初はそう思っていたし、ガーデンに関する以外でつるむつもりもなかった。
けどのぞみの吐く言葉は俺を救う。
のぞみを信じることができる。そう思うえるようになった自分にびっくりだ。
でも一つだけ、どうしても俺はのぞみを信じきることができない理由がある。

・・・・・あいつだ。

のぞみと初めて会ったその日に二人の王子はやってきた。
そして、のぞみとあいつがただならぬ仲というのもわかった。

俺はあいつが気に食わない。
むしろ嫌いだ。
のぞみのことはどっちかってーと好きだからあいつのことを信頼しきって当たり前のように隣にいるのをみるとイライラする。
どれほどの絆なのかしらねーけどぶっこわしたいという衝動に駆られる。

最近のぞみがほんの少しだけど暗い。
ほんの一瞬だったりするんだけど。
そんなときはたいていあいつ絡みだ。
数日前に転入してきた美々野くるみ。味方ではあるらしい。が、こいつもあいつにべったりしている。
そんなときにのぞみの顔にほんの少し影ができる。

(ん、またか)
美々野くるみがおっそろしいほど積極的なのに対してあいつに関するときだけはのぞみは消極的だ。それもなんかイライラする。
ちょっとしたやりとりに負けて帰っていくのぞみを横目でやりすごして後ろから追いかけていく。

「のぞみー!」
「なぁに?どうしたの?」
「めずらしく一人で歩いているから声かけてみた」
そばにあったベンチに座った。隣にのぞみも座ってくる。
「私だって一人で考え事したいときだってあるんだからね!」
「どーせあいつ絡みだろ?」
「・・・見てたんだ」
「別に見かけただけだぜ?見ようとおもってみたわけじゃないぜ?」
やりきれない顔をするのぞみを見てるとどうしてだか意地悪をしたくなる。
「なぁ、もうやめれば?」
「・・・・・何を」
「あいつなんかやめていっそ俺にしとけば?」
俺自身なんとなく思いついた言葉を言ってみた。言ってから少し後悔した。

むにっ
恥ずかしくなっておもわず思いっきりのぞみのほっぺをひっぱった。
「いだだだだだだだだ」
「冗談に決まってるだろ」
「・・・・・もうっ!」

「のぞみー!」
狙い済ましたようにあいつがやってきた。
「あれ?ココ、・・・田先生?どうしたの?」
「宿題のノート返そうとしたら先にいっちゃうし、カフェで渡そうとしたら渡せなかったからさ」
「えー?ナッツハウスによるよ?」
「これから会議で遅くなるかもしれないから一応」
「そう?ありがとう!」
「じゃあ僕は学校に戻るから」
「あ、俺もカフェのほうへ戻るわ」
「うん!じゃあまた後でね!」

「シロップが僕の隣を歩くなんてめずらしいね」
言葉が白々しく感じる。
「あまりにも会話がくさくって笑いそうだったから」
「どういうこと?」
「ノートなんかどうせ口実だろ?」
一瞬顔がかげったかと思ったけどそう簡単にこのポーカーフェイスは崩せない。
「口実って何が?職員会議があるのは本当だし」
「俺、あいつと付き合うことにしたから」
今度こそ笑顔が凍てついた。
「・・・付き合うってどういうこと?」
「言葉の通りだぜ?・・・・じゃーな!小々田セーンセ!」


あとはのぞみを釣るだけだ。


fin(11/june/2009)
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