いじわる


クレープ王女が帰った翌日、
私はまた授業のことがよくわからなくてココに質問をしていた。
古文は苦手。覚えることもたくさんあるし、とにかく難しい!というイメージがあるから。
だから古文の授業のときは授業以外で教えてもらうことがとても多かった。

今日は国語が5時間目で最後の授業だったから一通り教えてもらってからちょっと話をした。

「クレープ王女、意外とすんなり帰っちゃったね」
「そう?」
「だって最後の日なんて学校までついてきたから帰らない!って言うかと思ってた」
「あははは、そうだね」
ココは笑ってそう言った。そしてやさしく微笑んで私を見た。
「・・・・クレープ王女に何か言われたの?」
ココはちょっとびっくりした顔をした。
「それは・・・女性的な勘?」
今度は私がびっくりした。
「え?!そんなんじゃ・・・そ、そうなのかな?よくわからないけどなんだかココがとても落ち着いた顔してるからなにかあったのかな?って」
「のぞみはクレープが騒いだときあんまり動揺しなかったよね。ミルクはすごいまくし立ててたけど」
「ええええ?それは・・・・私が、あんまり焼きもちを焼かなかった、とかそういう意味なのかなぁ?」
「そう」
なんだかこのときのココはちょっといじわるで、何でそんなこと言うのかわからなかった。
教室に西日が入ってきて私は多分真っ赤だったと思うんだけどきっと夕日でココにはわからないはず。
「そんなことはないんだけど・・・ただ・・・わかっちゃったから」
「・・・?何がわかったの?」
「ココがクレープ王女のことを・・・そういう風に思ってないって」
なんだかどんな風に言ってもクレープ王女がかわいそうな言い方になっちゃうけど、思ったことを言った。
「・・・告白されたんだ。クレープに」
「え!?」
「だから僕の正直な気持ちを伝えたんだ」
「えええ!?なんて返事したの!?」
「知りたい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・う、うん」
一瞬私は悩んでしまった。ひょっとして想いを受け入れたからあっさり帰った可能性もあるし、って思ったらすごく焦ってきちゃった。
ココと目が合ったとき、私はとても変な顔をしていたかもしれない。正直予想外の展開に泣きそうだった。

ココが少し伸びた私の髪を指に絡ませた。こういうしぐさはココにはめずらしい。私はそれだけでもドキドキしてしまう。
「秘密。教えてあげない」
うわ!ひどい!
「純情乙女をからかうなんてもうココとなんか絶交なんだから!」
腹が立ってココを振り切って帰ろうとしたら、手首を掴まれたて、強引に振り向かせられた。
ココが真剣な顔をして私の目を見た。
「・・・傍にいて一緒に夢を叶えたい女性がいるって・・・・言ったんだ」
ココはそれだけ言うと教室から出て行ってしまった。


私は・・・私はその場に立ち尽くしてココの言葉を何回も心の中で繰り返して・・・・その日、ナッツハウスにはよらずに帰った。



fin(11/june/2009)
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