side S



別に嫌がらせっていうわけだけじゃぁない。
自分自身に気晴らしがほしかった。
「のぞみ!」
「ん?シロップ!おはよう!」
「のぞみさぁ、今度の日曜暇?」
「うん?暇っていうか行きたいところあるんだけど、一人なんだよぉ」
「なら俺付き合ってやろうか?」
「ほんと〜?!よかった〜!みんな忙しくて一人でいくのもさみしいなぁって思ってたんだよね。ココでも誘おうかと思ってたんだけど」
なら余計に好都合。ちょうどいい時に話を振ったと俺は思った。
「ちなみに行きたい所ってどこ?」
「日曜の夕方にうららの新曲発表会があるんだよね。隣町のショッピングモールで」
「へ〜じゃあ昼あたりからいってぶらついてうららに会って帰ってくるっていうのは?」
のぞみが目を輝かせた。
「いいね!いいね!うわ〜楽しみ〜!!でもいいの?お仕事とかない?」
「日曜ぐらい俺も休むよ。じゃあ明日11時に噴水のところでOK?」
「おっけー!」
「あ、待って、この件、あいつだけには言うなよ」
「ココ?何で?」
「何でも!他は誰に言ってもいいけどあいつだけは絶対言うなよ!いいな」
「ん〜?変なの?シロップが嫌なら言わないけど」
そういってその日は別れた。
多分誰かしらの耳にはいるだろうからあいつの耳にもはいるはず。それは仕方ないと思っているけど、とにかくのぞみの口から直接伝わらなければいい程度に思っていた。


約束の日にのぞみは待ち合わせより20分遅れてきた。
「朝早いわけじゃねーのに遅刻してくんなよ」
「ごめーん!りんちゃんに作ってもらったブーケ忘れちゃって途中取りに帰ってたの!」
「へー綺麗じゃん。なんていうかうららな感じがする」
「でしょでしょ〜!昨日りんちゃんが作ってくれたんだよ」
「んじゃとりあえず隣町にいって食事でもすっか」
「おっけ〜!」

飯食ってぶらついて、(女はなんで買うわけでもないのに店を見て回るのが好きなんだ?)時間があっというまに過ぎた。
「シロップ!アイス食べようよ〜!まだ1時間あるけど込むかもしれないから食べながら場所とりしておこうよ」
このモールは中央が吹き抜けの造りになっていてそのさらに中央が舞台になっていてそれを囲むように四方が階段になっている。
食べながら俺は自分でいったことを思い出してのぞみに確認した。
「そういえば、今日のことあいつにいってないだろうな」
「ん〜私は言ってないよ?でも昨日カフェでお昼食べてたときにりんちゃんと話してたときそばにいたかも・・・」
のぞみがちょっと自信なさげに言う。
「それならいーよ」

うららのミニコンサートは結構盛況で回りは人だかりになった。先に場所をとっておいたのは正解だったかもしれない。
始まる直前に強い視線を感じた。その視線を探り当てたところにはあいつがいた。隣にはくるみも一緒だ。
俺らは結構前だけど向こうは階上でこの人じゃちょっとやそっとじゃこっちまではこれない。
くるみが実はミルクだっていうのはちょっと前にわかったからどうせ買い物なんだろうけど思ったとおりわざわざ来るとはザマァミロって感じだ。
しかもくるみ連れ。

うららが登場して会場が沸きあがって二人は見えなくなった。



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