side C



最近、のぞみとあまり話した記憶がない。むしろ避けられているような気すらする。

「俺、あいつと付き合うことにしたから」

先日シロップが僕に言った言葉の真意をのぞみに聞けずにいた。そんなに日にちがたっているわけじゃないし、のぞみと二人きりになる機会もなかった。


今日はくるみに用事を押し付けて(ナッツの昼ごはん)先に帰ってもらったからのぞみと話ができるかもしれない、とカフェへ向かった。
近づくと会話が聞こえてきた。

「そういえばあんた、明日結局一人でいくの?」
「んーん、明日シロップといってくるよ」
「シロップと?」
(え?)

「明日どこかへ出かけるの?」
ちょっと白々しかったけど聞いてみることにした。
「ううん!ちょっとね。んじゃ私先に用意したいから帰るね!」
のぞみの態度は明らかにおかしい。
「あ、まって!私もいくよ!そんじゃお先にー!」
「また月曜日にね〜」
二人があわただしく帰ってしまってからこまちが話しかけてきた。
「ココさん、のぞみさんと何かあったの?喧嘩でもしたの?」
「いや・・・僕が聞きたいんだけど・・・」
「悪化しないうちに仲直りしなさいよ。ちなみに明日は隣町のショッピングモールへうららの新曲発表会へ行くのよ」
「うららの?ああ、そういえばちょっと前にそんなこと話していたっけ・・・」


翌日、行こうかどうしようか悩んだ末にモールへ行くことにした。
「ナッツ、悪いんだけどちょっと買い物へ出かけてきていいか?」
「もちろんかまわないが・・・どこまでいくんだ?」
「・・・隣町のモールまで・・」
「今からか?」
「ああ・・・くるみも住むことになったし買い足したほうがいいものもあるだろ?」
「はいはいはい!それじゃあくるみもご一緒します!」
「まぁくるみが一緒のほうが心配も少ないが・・・あまり遅くなるなよ」

結局くるみを連れていくことになった。
ついたときすでに夕方だった。このショッピングモールに来るのは初めてだったけど、とにかく大きくてとてもじゃないけどのぞみを見つけようなんて無理な話だった。
うららのミニコンサートは17時からだから会場へいけば嫌でも見つかるはず・・・と思ったけどこの会場へ来るのがちょっと遅かったらしく、舞台の周りはすでに人でいっぱいだった。
(・・・いた)
シロップとのぞみが楽しそうにアイスを食べながら話していた。
・・・二人がお互いのアイスを一口づつ食べあっているのを見たとき、僕は嫉妬を通り越して怒りすら感じていた。
そんな僕の視線にシロップが気がついた。
シロップは挑戦的に僕を見返した。その直後、うららが現れて会場が沸きあがりのぞみとシロップは見えなくなってしまった。
「くるみ、ちょっと下へ行こうか」
うららの歌が終わって人が引き始めたのを見て僕はうららの方ではなく、二人のほうへ向かった。

「のぞみ!シロップ!」
いつもなら満面の笑みを向けてくれるのぞみなのに、その笑みもちょっと堅い。
「二人ともどうしたの?」
「ああ、くるみの物が何もないからちょっと買い物に。それよりうららのコンサートがあるんだったら誘ってくれればよかったのに」
「え?うん、そうなんだけど、」
のぞみはちゃんと答えてくれずにシロップのほうを見る。
「だめだめ、今日は二人でデートなんだから邪魔すんなよ」
シロップが肩に手をかけてそんなことをいった。僕はどうすることもできなかった。
というよりもどうしていいのかわからなかった。僕は二人にどんな返答を望んでいたんだ?自分の場違いさに吐き気がする。
「あら!そうなの!やるわねのぞみ!ココ様、私たちお邪魔のようですからそろそろ帰りましょう!こんな時間ですし、夕食の支度もしないと!」
はっとしたときにはくるみに手をとられ、無理やり帰るような格好になった。


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