side N


・・・・わざわざ来なくてもいいのに。私は楽しい気持ちが一気に消えてしまっていた。
「・・・もうやだなぁ」
シロップが背中を軽くたたいた。
「ほら、うららが手を振ってるぜ」


「のぞみさん!シロップ!」
私は沈んだ気持ちを吹き飛ばすかのように明るくうららに話しかけた。
「うらら〜教えてくれないなんて水臭いよ!はい、これみんなから!」
「えええええ!いいんですか!?かわいいです〜!ありがとうございます!!あ、ちょっと待ってくださいね」
うららはマネージャーと二言三言話すとすぐに戻ってきた。
「二人ともこの後時間ありますか?よければ夕食ご一緒しません?鷲雄さんのおごりですよ!」
「ええええ!いいのぉ?じゃあちょっとお母さんに電話するからちょっと待ってね!」

私たちはそのまま上の階にあるレストラン(ちょっと高めの)につれてってもらった。鷲雄さんは仕事で一緒ではなかった。
「コンサートのあとはオフなんで3人で食事できてほんとうれしいです!」
「うらら全然教えてくれないんだもん!さすがにみんな予定がはいっちゃってて私とシロップしか空いてなかったんだ」
「すいません。なんかいつもいつも応援してもらってなんだか申し訳なくって・・・。今回はそんなに大きなコンサートでもなかったし言うほどでもないかなって」
「・・・一緒じゃなかったんだけどココとくるみも来てたんだけど・・・なんだかあわただしく帰っちゃった」
「そうなんですか?買い物かな?」
「デート・・・かも?」
「やだ、のぞみさん、それなんの冗談ですか〜?おもしろいですけどオチがないですよ!」
「え?え?そう・・かな?」
「だってココとくるみがデートって理由がないですもん。どうせくるみがココを振り回しているだけですよ」
私はそう言い切ってしまううららの言葉にちょっと救われた。
その後私たちは楽しく話してご飯を食べた。うららは鷲雄さんが送るので私たちはモールを後にした。


「家まで送るぜ?」
「え〜?悪いからいいよー」
「俺どうせ飛んで帰れるし」
「そっか!じゃあせっかくだからお願いしようかな?」
うちのすぐそばの外套のところで私はお礼を言った。
「今日は本当にありがとうね!すっごく楽しかった!うららも綺麗だったし食事もおごってもらっちゃったしね!」
「本当に楽しかったか?」
「ん〜シロップだから言っちゃうと、ココとくるみがきたときはさすがにびっくりしたよぉ。でも・・・ぜーんぶひっくるめたら楽しかったよ?」
「なぁ、本当にあいつなんかやめとけば?」
ふっと私がシロップの影に入った。キスしそうな近さになった。でも私は動かなかった。シロップはしないって思ったから。(もし本当にしそうだったらビンタしてる)
そのときシロップの腕が後ろに取られたのがわかった。それが誰だかすぐにわかった。どうしてこんなところにいるのか全くわからなかった。
「ココ・・・!?」
私は本当にびっくりして、びっくりして、・・・・思わずシロップの背中に隠れてしまった。
そっと見ると、ココがこっちを悲しそうな目で見ている。
「のぞみ・・・・」
私はどうしていいのか全くわからなかった。私はココに対して後ろめたいことはしていない。だけどココにあんな表情させているのは私だ。
私は逃げたかった。逃げちゃいけないのはわかっているのに逃げたかった。言い訳しないと・・・でも言い訳って?
そのときシロップが囁いた。
「部屋まで飛んでってやろうか?」
逃げちゃいけない。わかっているのに私はうなずいてしまった。


バサッ

シロップはひとっ飛びで私の部屋のベランダまで飛んでくれた。
「そんな顔してると禿げるロプ」
「・・・今日はありがとう」
そういうのが精一杯だった。私は多分泣きそうな顔をしていたと思う。
そのままシロップは帰っていった。

私はもう、どうしていいのかわからなかった。

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