1 雨がやんだら

『梅雨』という季節があるそうだ。
この世界にはじめて来て、毎日降る雨にいいかげんうんざりしていた。
パルミエ王国にももちろん雨は降ったけど、こんなに毎日降ることはなかったし、一日中降っていることなんかまずなかったから僕は心底梅雨が嫌いになっていた。
まだこちらにきて日が浅いというのもあるのかもしれない。
この雨を見ていると、なんだか余計なことまで考えてしまって暗くなる。しかもなんだか眠い。
雨が降っているからといって行動が狭まるわけじゃないのに、気分だけが暗くなっていく。
こんなのは僕だけなんだろうか?

「のぞみは意外と元気だね」
あっちいったりこっちいったり元気な中学生が梅雨を好きだとは思えなくて、なんとなく話題を振ってみた。
「意外とは失礼しちゃう〜〜!」
「ごめんごめん、ずっと外に出られなくってつまんないんじゃないかな?って思ったんだ」
のぞみは瞳だけ上をみて少し考えていた。
「つまんないよぉ?でも私、梅雨って今はそんなに嫌いじゃないんだ」
「へぇ!どうして?」
「へへへ〜秘密!」
「なんで?教えてよ」
ちょっと食い下がってみる。
「ん〜絶対じゃないから・・・そのときがきたら教えてあげるね!」

結局うやむやにされてしまった。
僕は少しでも早くこのもやもやした状況から抜け出したいんだけど。
ボーっと雨をみていると眠くなってうとうとと居眠りをしてしまう。すると大抵夢をみるんだけど、これがまたいけない。
大抵は悪夢だ。
王国が襲われたときのこと、こちらの世界でのぞみに会う前の苦労したことetc...
どうせならせめてこんなときくらいいい夢見せてくれれば気がまぎれるのに、そういうわけにもいかないらしい。

学園へいっている平日はまだいい。
日曜は悲惨だ。(僕的に)
やることもないし、雨が降っているとナッツハウスにも客はあまりこないから暇だ。
ナッツはどうかと聞いたことがあるが、ナッツは雨降りが割りと好きなほうらしい。落ち着いて本を読めるからとのことだ。
そんなんじゃ売り上げに影響するんじゃないかと思うんだけど、これは言わずに心にしまっておいた。

今日も朝からシトシトと雨が降っている。
「お昼前にはやむらしい」
ナッツが慰め程度に教えてくれた。けどどうせそんなのは一時でまた降り出すに決まってる。
僕は今日1日をどうやってつぶそうかと悩んでいた。そんなことを考えていたら少しだけ空が明るくなってきた気がした。

「ココー!ココいる!?」

勢いよくのぞみが入ってきた


6/july/2009
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