3 いろとりどり



「ただいま!」
ナッツハウスに飛び込む。
「突然降ってきたが二人とも大丈夫だったか?」
ナッツにいわれて確認したけど思ったより濡れてなかった。
「も〜こんなに突然降るなんてびっくりだよ」
「梅雨なんだから傘ぐらいもっていけ」
ナッツに言われ、のぞみはすごい顔をしたけど、すぐにナッツの手元をみて顔をほころばせた。

「ナッツ!それどうしたの?」
手元には少し大きめの鉢があった。花は紫陽花。
「りんに頼んでおいたんだが、さっき届けに来てくれた」
「季節ものだねぇ」
のぞみはそういうとそばによって、紫陽花の花をつっついていた。
「ねぇココ、学校にもたくさんの紫陽花の花あるの知ってる?」
突然話を振られてちょっと考えた。
「いや、あんまり意識して見たことなかったなぁ・・・」
「すっごい綺麗なんだよ!今度場所教えてあげるね!」
「ぜひお願いするよ」
のぞみは得意げに話す。
「紫や水色やピンクですっごい綺麗なの!梅雨の時期にしか咲かないから絶対に見たほうがいいよ」
僕はふと、なにかで読んだ紫陽花についての知識をのぞみに披露することにした。
「紫陽花がなんで場所によって色が違うか知ってるかい?」
「う〜ん?知らなーい」
「じゃあ理科の勉強だ。土には酸性、中性、アルカリ性、3種類あるのは知ってるかな?」
「小学生のときにやった記憶はあるんだけどぉ」
「リトマス氏とかで実験したことがあるんじゃないかな。紫陽花は酸性だと青い花が咲いて、アルカリ性だと赤い花になるらしいよ。さて問題です。中性だと何色の花が咲くでしょうか?」
「え〜!?中性は酸性とアルカリ性の真ん中だよねぇ?」
おずおず聞いてくるのぞみに僕はうん、と答えてあげる。
「じゃぁ紫、とか?」
「正解!」
のぞみの顔がぱぁっと明るくなった。
「わたし紫陽花の花がそんなふうに色が違うなんて知らなかった!薔薇とかと同じでそういう種類なのかと思ってた!」

自分がこんな風に心が軽いのは久々な気がする。

「そういえば、今週末には梅雨明けだとりんが言っていた」
ナッツがボソッと言った。
「暑い夏が来るね」
のぞみがなんとなく意味深に言った。気のせいかもしれないけど。
「夏休みがくるよぉ!」

やっぱり気のせいだったみたいだ。

もうすぐ梅雨は終わってしまうらしい。
のぞみのおかげでようやくこの季節のよさもわかったのに。
この世界の暑い夏を僕は知らない。でも、のぞみと一緒ならどんな季節でも楽しいかもしれない。
そんな風にさえ思えた。


fin(11/july/2009)現在の紫陽花の色の変化はこんなに簡単ではないようです。とりあえず、自分が子供の頃はこう習いました。
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